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東の果てでオハナミを
青い空、白い雲。
はらはら舞い落ちる、ピンク色の花びら。
「ジュディ、遥か昔、まだこの地球が緑豊かな世界だった頃、東の果ての国ではね、桜の木の下で、人びとが“オハナミ”という宴を楽しんでいたんだ」
「えー、それほんと?」
たくさん並んだ満開の桜。
その下にいる人びとの、楽しそうな笑顔。
父さんが見せてくれた画像データには、信じられない光景が映ってた。
だって今、この地球には植物のひとつも生えてない。
だけど、古代植物の研究者だったあたしの父さんは、本気で信じてた。
東の果ての国なら、まだ生き残っている桜の木があるはずだ、って。
「いつか東の果てで桜を見つけて、お前と“オハナミ”するのが、父さんの夢なんだ」
妄想ばかり口にする夢想家。
野菜みたいに、もっと社会の役に立つ植物を研究しろ。
みんなにバカにされ笑われながら、志半ばで父さんは死んでしまった。
だけど、あたしは知ってる。
父さんが、あえて途方もない夢を口にして、絶望だらけのこの世界に、希望を見いだそうとしてたこと。
桜の木を見つけて、父さんの夢を叶えたい。
その一心で、あたしは今日も旅を続けてる。
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