東の果てでオハナミを

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 扉を開け、階段を下りていくと、そこにはリビング兼寝室スペースがあって、隣にはシャワー、トイレもついている。 さらに、空気清浄システムも搭載しているから、シェルターの中でだけは、防護スーツなしで過ごすことができるんだ。  防護スーツを脱いで、白いTシャツと短パンだけになったあたしは手を洗い、カバンの中から完全栄養バーを取り出す。 「いただきまーす」 味気ないけど、これ一本で1日分の栄養がとれる上に、お腹もいっぱいになる優れもの。 『フゥー、ゴクラク、ゴクラク』 あたしが貴重な食料を口にしている間、ベンジーは充電スペースの中に入って、まったりしてた。 たまにおじさんみたいな発言するのは、たぶん父さんの影響だと思う。  夕食を終え、歯みがきしてシャワーを浴びたあたしは、壁に収納されている簡易ベッドを引き出し、横になり毛布をかぶる。 「おやすみ、ベンジー」 『オヤスミナサイ、ジュディ』  父さんがいなくなった後は、ずっとベンジーとふたりきり。 寂しくなかったわけじゃない。 だけど、いつか桜の群生地を見つけて、“オハナミ”するって夢が、あたしに旅を続ける原動力をくれた。 父さんをバカにして笑った人たちを見返してやりたい。 そんな負の感情だけを理由に旅してたら、たぶんすぐに心が折れてたと思う。  今だったら、迷わず言えるのにな。 父さんの夢は、あたしの夢だよ。 それに夢って、人間にすごいパワーをくれるんだね、ってさ。
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