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嘘つきな私と渚君。
私は、親友に嘘をついている。
私の名前は、金井英玲奈23歳。
私には、親友に言えない秘密があります。
「英玲奈、今日ね!渚君の所に行くんだけど……。英玲奈は、どうする?」
そう話すのは、村田朱里23歳。
私の幼稚園からの親友。
「えっと……」
私は、そう言いながら二人を見つめていた。
「朱里、毎回英玲奈ちゃん誘ったら可哀想だろ?俊介は、今日は来れないんだし……。ごめんな!英玲奈ちゃん」
彼の名前は、宮城渚25歳。
「行きます!私……」
私を、見つめる彼の目に(NO)とは言えずにいた。
「本当に、じゃあタコパしよう!材料買ってこーー」
朱里は、喜んでいた。
「うん!たこ焼き食べたかったから嬉しい」
何て嘘を平気でつけるようになった自分が怖い。
「渚君、俊介君呼んでよ!英玲奈は、俊介君が好きなんだからね」
「わかってるって……」
朱里は、渚君にそう言いながら腕を絡ませながら歩いている。
私は、目の前を歩く二人を見つめながら胸がチクチクと痛むのを感じていた。
こんな事になるなら、俊介君を好きにならなければよかったと何度も思ったけれど……。
あの日には、二度と戻る事は出来ない。
スーパーにつくと、渚君はカゴを取った。
「ごめんね!先に二人で行ってて!朱里、トイレ行ってくる」
「わかった」
「私も……」
行こうとしたけれど、渚君の目がそれを制していた。
「何?英玲奈」
「う、ううん。先に買ってるから」
「わかった!じゃあ、後でね」
そう言って、朱里はいなくなってしまった。
「行こうか!英玲奈」
「あっ、うん」
二人きりになると渚君は、私を呼び捨てにした。
「なあ!朱里に、話したいなら言ってもいいんだぞ!英玲奈が、そのつもりなら俺だってあの日の事……」
「言わないから……」
「そうだよな!言わないよな」
渚君は、ニヤリと笑いながら私に近づいて来た。
「何?」
「朱里がいない時は、手繋ぐんだろ?」
「うん」
私は、渚君の手に手を重ねる。
「たこ焼き粉、買いに行こうか」
「うん」
私と渚君は、手を繋いで歩き出す。
最初は、渚君を好きな気持ちは全然なかった。
だけど、いつバレるかわからない関係と渚君が二人になると優しくしてくるせいで……。
私は、いつの間にか渚君を好きになってしまっていた。
「青のりと鰹節でしょ?」
「これとこれだよな」
「うん」
「紅しょうがとねぎもいるよね」
私は、スマホを見ながら渚君に話していた。
「英玲奈」
「何?」
「俊介、呼ぶ方がいいよな?」
「あっ、うん。そうだね。朱里がその方が喜ぶから……」
私の言葉に、渚君は怒った。
「そこは、いらないって言うだろ?普通……」
「ごめんね。いらない」
「おせーよ!英玲奈。お前まだ俊介が好きなのか?」
「えっ、そんなわけないよ」
「嘘ついてんな!」
渚君は、私の顔を自分の顔の方に引き寄せた。私は、ドキドキしている。
「後で、お仕置きな」
渚君は、わざとそう言って笑った。
「はい……」
私は、逆らえずに呟いた。
ブー、ブー
「朱里だわ」
渚君は、そう言って私から離れて電話に出た。
「もう、タコの所にいないから!」
朱里は、すぐに現れた。
私と渚君は、離れていた。
「ごめん、ごめん。粉とか先に買ってた」
「いいけど……。俊介君、かけて」
「あーー。わかった」
渚君は、朱里にそう言われて俊介君に連絡していた。
「遅くなるけど、行くって」
「やったー!よかったね、英玲奈」
「うん、良かった。やったー!嬉しい」
対して、嬉しくもないのにそう言って私は喜んだふりをしておいた。
買い物を済ませると、私達は渚君が一人暮らししているアパートへとやってきた。
「英玲奈と渚君は、座ってて!私が、準備するから」
「朱里、花嫁修行中だもんな」
「そうだよーー。後、一年したら結婚するでしょ?」
「だなーー」
渚君と朱里は、楽しそうに話している。
さっさと結婚してくれたらいいのに……。
私は、二人を見つめながらそう思っていた。
「麦茶飲む?」
「あっ、うん」
朱里は、冷蔵庫から麦茶を取り出すとグラスに注いでくれた。
「向こうに持っていって!私、切ったりするからね」
「私も手伝うよ」
「英玲奈は、いいの、いいの。ゆっくりしてて」
「あっ、うん」
そう言われて、私は麦茶を持って行く。
「渚君は、たこ焼き器持って行っててね」
「うん」
渚君は、ガス火のたこ焼き器を持ってこっちに来た。
「じゃあ、テレビでも見てゆっくりしててね」
「ありがとう」
「わかった」
渚君の家の造りは、キッチンからリビングに声は聞こえるけれど……。
様子は見れない。
それは、この無駄に大きい革張りのソファーのせいだ。
渚君は、テーブルの上にたこ焼き器を置いた。
私は、麦茶を置いた。
渚君は、テレビをつける。
「朱里、音楽番組やってるよ」
「声あげて、聞きたい」
「わかった」
渚君は、音量を上げる。
私は、麦茶を飲んだ。
ここに来ると嫌でも思い出してしまう。
去年の夏の出来事を……。
「英玲奈、ここ座って」
私は、渚君にそう言われて隣に座った。
「俊介、来るって……。俊介にコクられたら付き合うの?」
そう言いながら、渚君は私の腰に手を回してくる。
「付き合わなかったら、朱里が怪しむんじゃない?」
私の言葉に、渚君は私の顔を覗き込んだ。
「じゃあ、あの日の事……。話そうかな?朱里に……」
「や、やめて」
「じゃあ、俊介がコクってきても断れよ!わかったか?英玲奈」
「うん」
私は、渚君に逆らえない。
それは、あの夏の出来事だった。
♡♡♡♡♡♡♡♡♡
朱里に渚君を紹介されたのは、22歳の時だった。私達は、三人でよく遊んでいた。
遊び出して5ヵ月が経った頃、彼女と別れたと言って俊介君がやってきた。私達は、いつの間にか四人で遊ぶようになっていた。
そして私は、気づいたら俊介君に惹かれていた。朱里にその事を相談すると酔ったふりして告白しちゃったらいいんじゃないと提案を受けた。
実行にうつしたのは、去年の夏だった。
「チキンとピザとか食べてわんぱくに過ごそうよ」
朱里は、そう言いながら笑っていた。私達は、チキンにピザにワインに……。たくさん飲んで、たくさん食べた。告白をしようとしていた私一人だけが酔えずにいた。俊介君は、いつも酔うとソファーで寝てしまっていた。この日も、てっきりそうだと私は思っていた。皆が寝てしまって、キッチンで私だけが片付けをしていた。
キッチンの明かりを消すと真っ暗闇になってしまった。私は、手探りでソファーに行く。
俊介君に告白をする事しか、私は考えていなかった。
いつも、朱里と渚君はベッドに寝てたから……。
ソファーにいるのは、俊介君なのはわかっていた。
手探りで、ソファーの下に辿り着くとドキドキが止まらなくなった。
心臓が耳についてるぐらいに五月蝿く感じる。付き合えなくてもいいから、キスしよう。酔った人間の思考回路は、欲望に支配されている。
今にも、溢れ出してしまいそうな恋心を抑えておく事が私には出来なかった。
もしも、このキスを受け入れてくれたら私を好きだって事。
そう考えた私は、ソファーに眠る俊介君にキスをしたのだ。
俊介君は、私のキスを受け入れてくれた。
このまま、付き合えるんだ。私達……。淡い期待と甘い想いが体を満たしていくのを感じていた。
ゴンッ……。
凄い音が響いた。
「いってっーー」
私は、その声に俊介君から離れてその場に横になって寝た振りをした。
「こっちで寝てたわ!渚、ベッド行けよ」
私は、その言葉に動けずに固まっていた。
「悪い!ベッド行くわ。下に、英玲奈ちゃん寝てるから気をつけろよ」
そう言って、渚君は私を踏まないようにしていなくなった。
ソファーに俊介君がやってきた。
俊介君は、使っていたタオルケットを私にそっと掛けてくれる。
私は、胸がチクチク痛んで泣いていた。
声を出さないようにしていたのに、声が出てしまっていたようだった。
「怖い夢見ちゃったかな?大丈夫だよ」
そう言って、俊介君は私の髪を優しく撫でてくれた。
気づいたら、私は眠っていた。さっきの事は、事故だと思って忘れてしまおうと私は思っていた。
次の日、朱里と俊介君は昼過ぎには家を出て行ってしまっていた。
私は、唇に何かが当たる感触で目が覚めた。
「おはよう、英玲奈ちゃん」
「あっ、ごめんなさい。すぐ帰ります」
「誰が帰っていいって言った?」
「えっ?」
私は、渚君に起き上がるのを阻止された。
「渚君……?」
「昨日は、熱烈に俺を求めたじゃない?忘れたとは言わせないよ」
「それは……。違うの……」
「俊介だと思ったんだよな?英玲奈ちゃんは……」
渚君は、私を覗き込むように見つめる。
「俊介に何か渡さないよ!最初から……」
「えっ?」
「英玲奈と出会ったのは、俺が最初だったろ?」
渚君は、そう言って私の髪を優しく撫でてきた。
私は、この日から弱味を握られて渚君の言いなりになった。
♡♡♡♡♡♡♡♡
最初は、嫌々だった関係が……。
今では、離れられない関係に変わってしまっていた。
「英玲奈、キスしようか?」
「あっ、今は駄目だよ」
「大丈夫だって!朱里にはバレないから……」
渚君は、私にキスをしてきた。
恋のドキドキなのか、バレてはいけないドキドキなのか、あるいはその両方なのか……。
私にも、もうわからなくなってる。
渚君は、何度も何度もキスをしてくる。
「火つけてて!出来たから」
「わかった」
朱里の言葉に私達は、離れた。
「ごめんね、遅くなっちゃって」
「ううん」
朱里は、たこ焼きを焼いてくれる。
私は、朱里にずっと嘘をついてる。
たこ焼きパーティーが始まって、20分後に俊介君がやってきた。
『お疲れーー』
乾杯をして、私達はお酒を飲んだ。
「タコパ最高だね」
「うん」
ニコニコ笑う朱里を見つめていると胸が締め付けられる。
あっという間に楽しいたこ焼きパーティーは終わった。
朱里は、片付けを始める。
「私も……」
「いいって、ゆっくりしてて」
朱里は、嬉しそうに笑っている。
私は、渚君と俊介君の元に戻った。
「俊介、疲れて寝ちゃったわ」
「そうなんだね。仕方ないよね」
戻ると俊介君は、眠っていた。
「こっち座ったら?」
「あっ、うん」
私は、渚君の隣に座った。
相変わらずテレビは、ついている。
キッチンで、片付けをする朱里の音と俊介君の寝息も聞こえる。
私は、またドキドキしている。
「英玲奈」
そう言って、渚君は私にキスをしてくる。
渚君も私も、ちゃんとわかっていないのではないだろうか?
恋のドキドキなのか……。
いけない事をしてるドキドキなのか……。
どっちなのか気づいてないのではないだろうか?
この関係は甘くて甘くて堪らない。
だから、私達は離れられない。
渚君と朱里が結婚しても……。
私が俊介君と付き合ったとしても……。
終わらせる事は、出来ないのがわかる。
「終わったよ」
「お疲れさま」
「ありがとう」
朱里の声がして、私達は離れる。
「歯磨いて、寝るね!渚君は?」
「俊介寝かせてから行くよ」
「わかった」
朱里と話しながら、渚君は指を絡ませてきた。
朱里は、洗面所に行った。
「英玲奈!まだ、俊介が好きなのか?」
私は、その言葉に首を左右に振った。
「だよな!もう、俺だよな」
「うん」
渚君は、私の頭に手を当てると自分の方へと引き寄せる。
私は、これからもあの夏の日を思い出して後悔するだろう……。
そして、この先も……。
後悔しながら、渚君とこうしてキスをするのだろう……。
私と渚君は、親友に嘘をついている。
でも、この嘘と罪悪感は……。
私達を離してくれない。
「英玲奈、好きだよ」
「私も好きだよ、渚君」
このドキドキは、本当に好きって事なのかな……?!
私にもわからない。
渚君も同じなのはわかってる。
それでも……。
私と渚君は…………。
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