1.望まぬ再会・望んだ再会

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1.望まぬ再会・望んだ再会

まだ寒さの残る3月。同窓会当日になり、地元に帰る為に早朝の駅へと向かい歩き始める。けれど、その足取りはどうにも重かった。 先生に会いたい気持ちと、会いたくない人に会ってしまうかもしれないという不安が交互にやってきて、電車に乗り込むのも気が乗らない。 これから2時間、この憂鬱な気分のまま電車から新幹線に乗り換え地元へ帰るのかと思うと、やっぱり欠席にすれば良かったかもしれないと後悔してしまう。 別に気にしなければいい、とは思う。 実際あの後、私は笑い者になったわけじゃない。それどころか、酒井君が私に罰ゲームで告白した事すら噂にならなかった。今までそんなことはなかったから、どうしてだろうとは思ったけど、多分私の反応が面白くなかったとかそういう理由だと思う。 こちらとしては、噂にもならなかったのは不幸中の幸いだった。 だから、気にしなければいい。学生時代の嫌な思い出なんて、他にも掃いて捨てるほどある。何度もそう思った。 でも、無理だった。私の中にあった恋心が裏切られたみたいで凄くショックで……告白してフラれた方がまだマシなんじゃないかと思ったこともあった。 あれ以来、私は恋というものに消極的になってしまって、好意を持つことすら怖くなってしまった。だから、この年まで恋人がいた事なんて一度もない。 「ちょっと拗らせすぎよね……」 車窓から流れていく景色を見ながら呟き出た言葉に、自嘲気味な笑顔が窓ガラスに映った。 友人の惚気話を聞きながら何度も羨ましいと思ったし、私もいつか素敵な人が現れたら、とは思う。 でも、いざとなると怖くなる。 初恋は実らないとよく聞くけれど、私の初恋は……実らないどころか、罰ゲームによって粉々にされてしまった。 その傷があまりにも深過ぎて、未だに引きずり続けてしまっているんだから、笑い話にすら出来ない。笑い話にでも出来れば、きっと吹っ切れるのに。 憂鬱な気分のまま、あの頃のことを色々思い出しているうちに、乗り換えの駅に着いた。 乗車予定の新幹線が到着するのを待っていると、視線を感じるような気がして何となく辺りを見回してみる。 高校生だろうか。まだ大人ではないけど、かと言って子供でもない、微妙な年頃の男女の集団の向こう、2つ隣の乗車番号の先頭に背の高い男性が立っていて、こちらを見ていた。その男性は、私と目が合っても逸らすことなく、何かを確かめるようにじっと見つめてくる。 あまりにも見つめられるから知り合いかと思ったけど、仕事関係含め思い当たる人は浮かんでこない。 でも、知っているような気もする。なんというか、見覚えがある感じがして、気になって仕方がない。 しばらく考え込んでみても思い出せず、モヤモヤを抱えたままやってきた新幹線に乗り込むしかなかった。
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