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「それって、ドラマのラストシーンを再現したつもりだったのではないですか」
「最期のお別れの?」
病気になった男性が、最期の瞬間に桜のある風景の中で誰と過ごしたかったのか、その写真が答えなのではないだろうか。
「きっと、そうですよ。学生の頃の思い出を覚えていたんですよ」
おばあさんは、はらはらと泣いた。
「そうなのかしら。もしそうなら、分かりにくいったらないわ」
「話さないのも困りものですね」
「本当にね。そう、同じ景色を私とーー」
二人の間にはきっと絆は生きていた。おばあさんは涙を拭いて、立ち上がった。確かにその姿は意志の強い女性に見えた。
「あなたに昔話を聞いてもらったおかげで、気が晴れたわ」
「本当ですか」
「ええ、とても有意義な雨宿りーーいえ、お花見だったわ」
雨はいつの間にか止んで、鳥達が桜の蜜を吸いにやって来ていた。
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