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「今度もまた偽物だったか」
部屋で二人きりになってから老大はポツリと呟いた。
「黒色皇帝などと言われたところで、所詮は血を分けた妹一人見つけられない」
実際のところ、老大の妹なら――七人いた兄弟の内、十歳下の末の妹だそうだが――もうお婆さんだろうし、赤ちゃんの頃に売られてしまった身の上ならとっくに死んでいるのではないかと思うけれど、本人にとっては万に一つの望みを捨てられないのだろう。
「川辺の石ころの中から玉を探し出すようなものだ」
苦く笑うと、老大はこちらに手招きする。
私はそっと歩み寄って長袍の膝に腰掛けた――といっても、七十近い膝にこちらの全体重は掛けないように中腰の尻を預ける感じだ。
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