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「小靜や」
パーマを掛けたばかりの私の後ろ髪を確かめるように撫でる。
「お前も自分の身内を探したいかい?」
「日本のお父さんとか」
「もう名前も顔も判りません」
そもそもまだ生きているのかすら。
「私には死んだ母さんより外に身内なんてありませんわ」
今となっては思い出せるのは病床に伏せる母さんとアパートの窓から見送った背広の男の人と白いシャツと半ズボンの男の子の後ろ姿だけだ。
人工的に縮らせた後ろ髪を真っ直ぐに戻そうとするかのように暫く撫ぜていた手が止まって優しく耳元で告げる声がした。
「お昼にしようかね」
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