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「中環に日本料理の店が出来たのさ」
車の後部座席で老大は隣の私の手を上から握りながら囁いた。
「それは楽しみですわ」
黒ガラス越しに先程の幹部と三下たちと、そして新たに組織に加わった、「強強」と仮初の名をつけられた若い男が頭を下げる姿が認められた。
腫れていない右の目は覚悟を決めたような、どこか恨みを秘めた光を宿している。
何だかこの男は誰も観ていない時に鏡に映る私と似たような眼差しをしていると思う。
二人が血のつながった実のきょうだいだと知るのは、もう少し先の話。(了)
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