血縁

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「あの女はもう新加波(シンガポール)行の船で飛びました」 「そうか」  巨体の部下からの報告に頷きながら、男にしては中背よりやや小柄な老大(ボス)はごくゆったりした所作で私が淹れた鐵觀音(てっかんのん)の茶碗を取り上げて啜る。 「部屋に残っていたあの若造の方に吐かせたところでは息子ではなく情夫(いろ)だったとのことです」 「そんなことだろうと思ったよ」  カラカラと乾いた声で笑う。  長身の部下――といっても十七の私より少なくとも一回りは年上であろう幹部は恐縮した風に尋ねる。 「あの小僧はまだ外におりますが」  ややあって老大は低く答えた。 「連れて来い」
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