桜とダルメシアンのある風景:習作2024春

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休日の午前中、缶ビールを片手に、近くの河川敷を歩く。 土手にずらっと植えられた桜は、満開らしい。 「いい天気でよかった、空気ちょっとひんやりしてて気持ちいいー。」 一緒に花見をしながら散歩しようと誘ってきた彼女が、隣で伸びをしながら言った。 「んー、今年も壮観!桜の木って、ずらっと並んでるの、すごくいいよね…。 花もかわいくて好きー。」 垂れ下がった桜の枝に、ひらひらと近づきながら、彼女は平凡な感想を口にしている。 彼女の言葉は、いつも平凡だ。 「見て見て、あれ。」 再び隣を歩き始めた彼女が、ひそひそ声で言う。 「あの人たちが散歩してるの、古いアニメ映画に出てた犬だよ…!」 まだ少し遠目だが、真っ白な毛に黒の斑点のある、あまり見ないタイプの犬を、西洋人風の年老いた男女が連れている。 「ご夫婦かな…あそこだけ外国の桜並木みたいで、すてきね。」 平凡な彼女の、平凡な感想。 「わたしたちも、あんなふうになれたらいいよね。」 「おれは若い女がいい。」 「知ってるー。」 彼女は、楽しそうに笑っている。 くすんだ日常に、あたたかな色を塗っていく、彼女。 かたわらを通り過ぎた老人たちと犬を振り返って、二人で眺める。 「今年の桜はもう終わりそうだけど…。 また来年も、一緒に来てね。」 こちらに顔を向けた彼女から視線をはずし、その手を乱暴にとって引き寄せた。 優しく握り返された手の感触を確認して、 「…そうだな。」 今度はすなおに、返事をした。
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