桜の下で泣くキミは

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桜の下で泣くキミは

 僕はキミのことを知っている。大学でミスキャンパスに選ばれた佐久間(さくま)りらさんだって。 『りら、可哀想だよね。目が見えなくなるなんて』  知名度がある佐久間さんの話を女子たちがしていたのを聞いた僕は、インスタをインストールして佐久間さんの投稿を探した。 【最後の桜を焼き付けてくるよ】  黒い背景に白い文字で書かれた投稿だけ。どこの桜だとか書いてなかったけれど、大学生の僕らが行くとするなら近場の公園だと思ったんだ。 『あの、今日の佐久間さんのコーディネート教えてくれませんか?』  完全に変質者扱いされた視線で見る先輩方。それでも、僕は食い下がらずに理由を述べる。 『僕、佐久間さんに一目惚れして、話してみたいと思ったんです!!』  あわよくばなんて下心はない。こんな投稿をする佐久間さんの心を気持ちを少しでも前向きにさせてあげたかっただけなんだ。 『黄色いフレアワンピースだよ』  僕の熱い熱意が伝わったのか、女子の一人が教えてくれた。僕は深々とお礼をして、スニーカーを踏み出して、公園へと走っていく。
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