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午後の仕事が始まり、柏木くんと明日香が何かを言い争っている姿が、ガラス越しに見えた。
(何かさっそくやってる…//)
私は心の中でモフモフしつつも、わざと見ないようにして、パソコンに向き合った。
なのに、隣の川内さんが
「ホリカヨ」と声をかけてくる。
なんだか、嫌な予感。
「はい?」
「あの2人は…そろそろなの?」
「そろそろって?」
「結婚よー」
「さあ?」
「ったく、少しは恋愛に関心もちなさいよねー」
もちたいんです!心から!
でも、できないんです…!
「ホリカヨの年代で、誰が一番早く結婚するか、みんなで賭けてるのよ」
…は?…賭け?
「毎年やってるの。知らなかったっけ?」
「…はい」
「今年の新入社員もこれからやるけど。ホリカヨも一口賭ける?」
「……いえ」
賭けなんて、オハシタごときができません、って。
カタカタカタカタ…と黙って入力作業をしていると。
川内さんが再び口を開いた。
「賭けの状況聞きたい? 同期に言わないなら教えたげるけど」
「……」
悩んだけれど、ここまで言われたら聞きたくなる。
「…聞きたいです」
「1位は矢島明日香だよ」
……やっぱり。
「最下位はホリカヨ。賭ける人はゼロだった」
…ですよねえ。
って、その情報は聞きたくなかったんですけど(涙)
「私だけはホリカヨに賭けてあげようかぁ?……ってあんた彼氏いたっけ?」
「……いません」
「ごめん、やっぱやめとくわ」
川内さんは片手を立てて謝った。
その方がよいです。
結婚はおろか、彼氏ができる未来も見えませんから。
柏木くんたちを見て、モフモフするのが関の山なのです。
ふとガラスの向こうを見ると、営業部全員が1か所に集まっていた。
(あれ? 何かあったのかな)
電話が鳴り、私は仕事に戻った。
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