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終業後、女子更衣室のロッカーで制服を脱いでいると、明日香がやってきた。
「ホリカヨじゃん! 久しぶり!」
「明日香が更衣室にいるのって珍しいね」
総合職の営業をしている明日香は、私たち制服組とは違って、いつも高級そうなスーツを着て直行直帰をしているイメージがある。
「あー……。ストッキングが伝線しちゃってさあ」
「替えある? 私あるよ」
「私もあるから大丈夫、ありがとね」
明日香はニコっと笑って、自分のバッグからストッキングを取り出した。
う~ん、可愛い……。
すれ違うとき、甘い香水の匂いが漂う。
柏木くんはこの香りを至近距離で嗅いでいるのだろうか。
って、手がアチチ!!
「……なんか今日、集まってたよね?」
私は話題を変えるためにも、聞いた。
「あ、見てた?」
「うん。臨時集会的なものかな、って」
「来月から、国内の営業部長が変わるんだってさ」
「へー」
「たぶん明日、大奥も話題になると思うよ」
「?」
「営業センターも統合するからさ」
「えええ!!!」
「ガッツリじゃないんだけど。ホリカヨたちは営業アシスタント的な立場になるんじゃない?」
「……」
衝撃でしばらく会話にならない。
「そんなにショック?」
「……いや」
「あんなオバサンたちとずっと一緒に働くより、男もいたほうがよくない?」
「…そりゃ、そうだけど」
「男と一緒になるから、大奥は大騒ぎだろうね。アハハ!!」
明日香も含め、みんな大奥大奥とバカにしていうけれど。
私たちはそれこそ、規律をもって帝国をつくりあげてきたわけで。
それが変わるのは少し寂しい気持ちになる。
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