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「A4のコピー用紙ないよー。ホリカヨー」
「ホリカヨ、稟議書のファイルどこにある?」
「ホリカヨ~! ホリカヨ~!」
「はい! はい! 今やりますから……ちょっと待ってて下さい。……くすん」
私が所属するコールセンター、別名…営業センターは、周りから『大奥』と呼ばれている。
理由はまあ……勤務年数が長い女性が多くて、ギチギチの上下関係があるからだろう。
もちろん『大奥』なんて言うと、コンプラ案件なので表立っては誰も言えないけれど。
ガラパゴス化した一大帝国『大奥』では、何があってもお局様からの命令は最優先だ。
なので、さっきの経理部の仕事よりも、川内さんの依頼のほうをまずは速攻で終わらせた。
なんていったって、川内さんは御目見以上だ。
敬わなければならない。
川内さんからは「ほんとに遅いんだから」とかなんとかブツクサ言われたが、それ以上は何も言われなかったので、ほうっと胸をなでおろす。
「別に急ぎじゃない」と言われて信じると、ドえらい目に合う。
彼女の中では、急ぎじゃないと言ってはいても…本当は急ぎなのだ。
今回だってわかっていたのに、すっかり油断してしまった。
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