45人が本棚に入れています
本棚に追加
続いて、経理部の仕事にとりかかる。
そもそも……今日の午前中が〆切なんて、連絡あったっけ。
と、ぼんやり思ったがそれ以上は深く考えないことにした。
とにかく終わらせるのが一番だ。
「あれ?B5のコピー用紙がないよ~!」
「補充してよねッ!」
「ミネラルウォーターも替えなさいよー!」
ああ…しまった。
今度はB5か。
ミネラルウォーターは、朝イチで郵便局に行ってたから、チェックできなかった。
……というか私以外は、誰も何もやらないんだね。
「はい……すみません」
私は小さい声でつぶやいた。
隣の席の美玲ちゃんが、なぜかハアとため息をついた。
なぜため息をつくのか。
あなたがやったっていいことなんだよ?と心の中で思ったが、何も言えなかった……。
……昔の『大奥』には御半下(オハシタ)という、雑用一切を受け持つ下女がいたという。
彼女たちは言われたことをハイハイ言いながらやってお給金をもらっていたことだろう。
通常業務以外にも、コピー補充、ミネラルウォーターの交換、観葉植物への水やり、受話器のアルコール消毒などの雑用をハイハイ言いながら毎日こなす私は、
間違いなく現代の『オハシタ』ではなかろうか。
「ホリカヨー! 経理部から内線―!」
「…はい」
そして私は、本名の堀井嘉与子(ほりいかよこ)を略されて『ホリカヨ』でもあった。
最初のコメントを投稿しよう!