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我が家の家計からきっと大学は無理だろうと。高校卒業後に働くつもりでいた。
でも当時の担任の先生が「奨学金制度もあるから」と言ってくれて、そこから勉強も少し頑張って、Fランクだけど女子大に滑り込みで入ることができた。
大学時代もバイトをかけもちして、大学生らしいことはほとんどしてこなかったけれど。
ある日、大学の就職課に呼び出されて犬飼商事を試しに受けてみなさい、と言われた。
犬飼商事は、戦前からある大手繊維総合商社で人気のある企業で、毎年多くの大学生が受けては落とされることで有名だった。
無理です!と言い張っていたけれど、なぜか採用試験に合格した。
奇跡だ!と意気揚々と入社した私だったけれど、「普通枠」での採用ということを知ってガックリ肩を落とした。
「普通枠」というのは、犬飼オリジナルの制度で、優秀な人材ばかりではなく「普通」の人も入れようということから作られた枠。
というのは建前で、企業のなかでの一種のスケープゴートだ。
「あ、こいつ(普通枠)より俺のほうができる!」と比較して自信をつけさせることがねらいなのだとか。
なんだそれ!
男女それぞれにいて、女は私で、男のほうは村田くん。
いつもヘラヘラ笑っていて、私と同じ匂いがする。
完全に周りからマウントをとられているのが似ている…。
村田くんは販売促進部のほうに配属されて、全国を飛びまわっている。
私は大奥で。
ハードな仕事でも私たちは働き続けている。
私たちの共通点は「めげない」ことかもしれない。
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