恋のゆくえ

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数日後には、われわれ営業部の社員旅行先が決まった。 ハイキング&老舗料亭で豪華ランチ。 「バーベキューは用意が大変だから却下された」 柏木くんが営業車の中で、裏事情を教えてくれる。 でも…… 「郡司部長が好きなのは白ワインだけど、老舗料亭にあるの?」 「地ワインがある!って…郡司部長が好きなもの、よく知ってるな!」 「……」 そりゃあ、まあ…ね。 「ハイキングはそんなに高い山じゃない。とはいえ、サンダルで行っちゃだめだよ。ある意味登山だから」 「と、登山なの?」 「登山っていうと女子社員嫌がるじゃん。だからハイキングっていうことにしたんだ。うちのレインパーカー着て会社の宣伝もしようってことになってる」 「へ、へえ」 「最近、矢島とはどう?」 「……うん。普通かな」 特別嫌なことをしてくるわけでもなく、というより、会話自体をしてない。 「矛先変えたかもな。俺にその気がないのがわかって」 「……うん」 「俺はどっちかっていうと、うん、堀井みたいなタイプのほうが好きだから」 「ほえっ?!」 こ、この天然くんが……っ。 ドギマギさせないでよ。 といいつつ、手がまったく熱くならない。 私の矛先も郡司部長に変わったからだろう。 「あと、こないだありがとう。ミハマのこと」 「あ、いや……」 「郡司部長が褒めてたよ。堀井が活躍した、って」 胸がドキドキする。 「堀井と郡司部長って、良い師弟関係だよな」 「……」 「兄と妹って感じもするけど」 柏木くんはニコニコしながら言ってくる。 あ、あのう……われわれは恋愛関係に受け取ってもらえないのでしょうか。 師弟とか兄妹とかって。 たしかに、最初の出会いは客としてだったけど。 よっぽど恋愛に結びつかない同士なのだろうか、とちょっとガッカリしてしまった。
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