45人が本棚に入れています
本棚に追加
と、そのとき。
堀井整骨院のドアが開いた。
ハアハアと息を切らした孝美さんが入ってくる。
「さっきの話、信じていいんですか?」
「……」
「私を愛するって、泰造さん……言ってくれました…」
孝美さんの瞳から涙がこぼれる。
「はい。心から……愛してます」
父親が振り絞るように答えた。
孝美さんが泰造を上から包み込むように抱きしめる。
「やっと言ってくれたっ」
まるで子どもを愛でるように、父親を撫でる。
…孝美さん、待ってたんだ。
メガネの男が飛び込んできて、その光景を見て愕然としている。
しばらくしてから悔しそうな顔をして去っていった。
「籍入れてください。もう私を……泰造さんだけのものにしてください」
「「……!!!」」
孝美さんの積極的な告白に、私たち親子はそろって顔を赤らめる。
「嘉与子ちゃん。調子が悪いところ、大騒ぎしてごめんなさい」
「いえ!」
「私、嘉与子ちゃんのお母さんになってもいいかな?」
「もちろん!!」
私は即答する。
父親だけはポォっとしている。
「お父さん、ほらシャンとして」
「……孝美…さん。本当にいいのか、俺となんかで」
「"俺"がいいんです!」
そう言って父親の胸のなかに飛び込んだ。
父親も孝美さんの腰に腕を回す。
幸せそうに抱き合う2人を見て。
「よかったねえ」
私は感涙して、見ている光景がぼやけた。
× × ×
善は急げ!で、翌日に婚姻届を出しにいくことになった。
そう、私たちは4人家族になった。
ずっと夢見ていたこと。
そう……うれしいことだったんだけれど……。
最初のコメントを投稿しよう!