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新しい生活
「下着が無くなった?だとぉ」
「しー! そんなに大きい声で言わないで」
ランチのとき。
一緒に食べていた星野に、ここのところ抱えていた悩みをうちあけることにした。
孝美さんと陵くんが堀井家に越してきて新生活をはじめて、早1週間。
スピード急展開で、新婚夫婦の2人は周りが見えていない。
だから…お年頃の陵くんがいきなり…赤の他人の女性と住むようになってどうなるか、を考えていなかったに違いない。
「なんか……タンスの中、漁った跡とかあるんだ…」
「1人で……処理してんだろうね」
「処理? そうなの?…」
処理というのがなんなのかわからないけれど、某フリマアプリに売られてないといいな……。
星野には言ってないが。
偶然を装って、お風呂場を覗かれたこともある。
カタンと音がして。
湯船につかっていた私は、タオルで前を隠しながら「な、なに?」と言ったら。
陵くんにバスタオルを放り投げられた。
本当に持ってきてくれただけかもしれないが……。
「こうなったらさ。1人暮らしするしかなくない?」
星野がズバリと言ってくれる。
生まれ育った堀井整骨院だけど。
愛着があるけれど。
もう私も独り立ちしていい年齢だし。
「そうだね」
…私もそう思っていた。
「彼氏と住めば?」
「いないっつーの」
ヒャハハと嬉しそうに笑う星野。
彼氏と言われて、郡司部長を思い浮かべる。
いやいや……そんな。
「寮も入れるけど、どうする? 30までだから、あと5年で出ないといけないけどさ」
総務部の星野だけあって、社員寮に詳しい。
「う…ん。探してみるわ」
寮か…。
会社から遠いんだよね。
近くに住むとなると、都心だけあって家賃が超高いから。
だからといって遠くなるのも。
満員電車で辛いー。
ランチから戻ってきて、うーんうーんと自席でパソコンの賃貸物件を見ていると、
美玲ちゃんがやってきた。
「ホリカヨさん、家探してるんですか?」
「うん」
「……会社近く?」
「できたらそうしたい…」
会社近くだったら、郡司部長のマッサージを余裕もってできるかもしれないし…。
終わってすぐ帰れるのは嬉しい。
「なら、私と一緒に住みません?」
「え?!」
驚いて、美玲ちゃんのほうを振り向いた。
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