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「まあ、郡司さんが来よう来まいが、うちらには直接関係ないよねえ。接点ないだろうし」
「だろうね」
「それよりも! 柏木と明日香、また一緒にいるよ」
同期の星野が指差した方向には、噂の2人が差し向かいに座っていた。
微笑みあって、カレーを食べている。
それを見て、ズキ…と胸がうずく。
「えー。つきあってないっしょ」
「えーそうかな」
「ケンカばっかしてるじゃん」
…それは仲がいいからなんだよ。
営業部のケンカップルこと、柏木蓮と矢島明日香は、私たちの同期だ。
この2人は入社当時から注目のまとだった。
それぞれKとWの有名私大卒で、営業成績も群を抜いてよい。
先月、お互いに「係長」に昇格したばかり。
3年目になる私たちの中では異例の大出世だ。
モデル並みにスタイルがよく美男美女同士で、並ぶとそれだけで場が華やかになる。
そう、2人が並ぶと…。
だんだん鼻息が荒くなってきて、
私は氷たっぷりの水が入ったコップを手にとって、喉の奥に流し込んだ。
「ちょっとトイレ行ってくる」
ガタっと席を立つ。
「いってらっ…しゃい。ってあれ? ホリカヨ、氷も全部食べたん?」
空のコップを持ち上げて、不思議そうに首をひねる星野。
その姿を視界の端で見ながら、トイレに走っていった。
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