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新しい部屋の契約は、トントン拍子で進んだ。
美玲ちゃんとは、家賃・水道光熱費・ガス代を折半する話になったが……。
「私、基本寝るだけだと思います。会社帰りに学校行ってるんで」
「え!…何の?」
「私、弁護士になりたいんでロースクールに」
「!!」
「元カレともその学校で出会ったんです。アイツは裕福な家庭なんで、金に物言わせてソッコーで受かりましたけどね。…チッ」
「……」
「本当に、お金さえあれば人生イージーモードですよね」
美玲ちゃんはため息をつきながら言った。
「……わかるよ。私も奨学金返済…まだあるし」
私だって、決して裕福な家ではなかった。
もっとお金があれば、って常々思ってる。
「じゃあ私たち仲間ですね。ここ東京で成り上がりましょーよ。ホリカヨさんは…夢あります?」
「夢??」
「そう、夢です。30までには結婚したいなぁとか。今の仕事で出世したいなぁとか」
「……特には」
「失礼ですが、彼氏は?」
「いたことない……」
「そうですか。じゃあ今度合コンを企画しますんでそこで彼氏を作って……」
合コン?!
「あ、あの…ね! 好きな人はいるの……」
「へえ」
「……まだ片想いだけど」
「なるほど。まずは見た目ですね。今度、一緒に洋服見にいきましょう。それとメイク。そして…色気たっぷりの仕草ですね。それで郡司部長を落としちまいましょ」
「落ちるかなぁ」
「そんなナマッチョロイこと言ってないで、落とす!んですよ」
「……って、私言ったっけ?」
自然に…いま、普通に特定人物を言ってたけれど。
「好きな人、郡司部長ですよね?」
「だーーーー!!!」
私は急いで美玲ちゃんの口をふさぎにかかろうとして。
今この場所が、2人しかいない家だということに気づく。
「な、なななんで…知ってるの……?」
「私、ホリカヨさんの隠れウォッチャーなんで」
「なにそれ……」
「ホリカヨさんの一挙一動が可愛くて、ついつい観察しちゃうんですよねー」
よくわからないけれど、まさかバレていたなんて。
「そんなにバレバレな態度?」
「いや……そんなことは。むしろ…柏木さんを好きな印象のほうが強いんじゃないですかね。矢島さんが流した噂もありましたし」
「……ああ。明日香のね。というか、柏木くんと私は付き合ってないから! 安心して」
「?」
「柏木くんは、美玲ちゃんの彼氏だもんね」
それを聞いて、美玲ちゃんは珍しく驚いた表情を浮かべた。
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