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翌日…水曜日。
いつものように施術を行う。
営業部の部長として、いつもどんなプレッシャーをかかえているのか。
毎回触ると、ゴリゴリ凝っていてお疲れモードでかなり辛そうだ…。
そして施術中に必ず寝落ちしてしまう。
気持ちよく寝ているのを起こすのが、けっこう辛かったりする。
レンタルスペースじゃなくて、郡司部長の自宅でもいいんだけれどなぁ。
そしたら、そのまま朝まで寝かせてあげられるんだけど。
と、私は考えはじめていた。
この人を本気で癒してあげたい。
という思いが日に日に募る。
「……今日は香水…つけてるのか?」
寝ていると思ったら、起きていた。
「あ、気づきました?」
「……」
「美玲ちゃんから借りたんです」
フェロモン入りの…女子力高めの香水を。
ムラムラさせる!と評判らしい。
ムラムラ?
……ムラムラってなんだろう。
「なんだか落ち着かないな」
「え?」
「いつもの柔軟剤の匂いのほうがいい」
「っ!! 私の匂い、嗅いでたんですか?!」
「人を変態みたいに言うな……!」
「だって……」
まさかそんな。私の柔軟剤の匂いを……。
「今まで通りでいい」
「はあ……」
このままだと、耳元にふう……もできないや。
「癒したいのになぁ」
あっ!思わず声に出てしまった。
恥ずかしい。
「…俺は充分、堀井に癒されてるよ」
郡司部長が言った。
「マッサージ以外にもな」
「……」
「……今のに、トキメく要素あったか?」
私の手の熱さに気づいて、部長が聞いてきた。
「……」
「……?」
「…ずるっ」
私は涙がにじんで、なおかつ鼻水まで出てくる始末だ。
郡司部長は、知らない。
私は毎回あなたにトキメいてるんだ、って。
お金なんかいらないから、ただあなたを癒したいんだ、って。
…どうしたら伝わるんだろう。
この時間をなくしたくない。
もう、郡司部長無しの生活は考えられない。
25年目で私、はじめて…本気の恋をしている……。
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