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ミハマさんに搬出する荷物があって、柏木くんと久しぶりに外出することになった。
ミハマさんの娘さんとは、あの件がきっかけとなり世間話をする仲になった。
「柏木さんって、カッコいいですよね」
ポッと顔を赤らめている。
「彼女いるのかなぁ…」
「さ、さあ?」
「今度、聞いてもらえませんか?」
「うん……」
美玲ちゃんじゃないとわかって、柏木くんの好きな人にすっかり興味がなくなった。でも、明日香にも依頼?脅し?をかけられていたことも思い出して、帰りの車で話してみることにした。
「変なこと聞いてもいい?」
柏木くんは運転しながら、
ニコニコと「どうぞ」と答える。
「……例の好きな人とはどうなった?」
「……ああ。うーん。俺の想いびとには、どうやら別に好きな人がいるみたいなんだ」
「……」
「俺が絶対敵わない相手。へこむよな」
「…そう」
柏木くんが絶対敵わない相手って、そうそういないと思うけど。
って…もしかして。
「郡司部長?」
「ご名答」
「……元カレが郡司部長って、もう無理ゲーだよな」
「!!」
好きな人はもしや…
「松村係長?」
「フッ、ばれたか」
柏木くんは笑った。
「堀井も一緒にいたよな、あの歓迎会のとき。すげえ綺麗だなって一目惚れしちゃって。いろいろアクション起こしてみたけど、見事に全部外してる。もう見込みなしって確定」
「そんな……」
「郡司部長しか見えてないよ。あの人は」
柏木くんが悲しそうな目をする。
「柏木くんは!いい人だよ!誰にでも優しくて!いろんな人からモテモテだよ!」
思わず、私は叫んでいた。
「そうは言っても、付き合ったらみんな面白みがないって離れていくんだよな…」
「そんなことないって!」
「じゃあ、堀井。俺と付き合う…?」
私はピタッと止まってしまった。
「はは、冗談。…んー冗談とも言えなくもないけど。堀井とだったら……まあ相性いいし、仲良しカップルでいられそうな気がするけど」
「……」
「すごい固まってるw まあいつか、俺も堀井の視野に入れてくれない?ってことだよ」
「……」
あんなに憧れていた柏木くんなのに。
この先も柏木くんみたいな優しい男性に会える保証はないのに。
だから絶対にうんというべきなのに。
なぜだか…言葉が出てこない。
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