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──カチ……カチ…………。
一人だと、マウスの音がいやに大きく聞こえる。
画面に映るのは、『あの時代』の写真。
静かなので、自分の呼吸の音やマウスの音くらいしか聞こえない。しかしそれが逆に、心への重石を感じ取るのを加速させていた。
「………………斎藤…………」
思わず口から彼の名前がこぼれ落ちる。
ハッ、と思ったが、訂正はしなかった。
忘れると自分に言い聞かせていたが、やっぱり………………。
「俺には……無理だよ………………」
画面が涙で歪んで見える。
口が震え、嗚咽しか出てこない。
「俺……おれぇ……ぐすっ…………」
袖で涙を拭おうが、涙は次々と溢れ出す。これ以上は拭けないと、袖がびしょびしょになってしまうがお構い無し。涙を流すことが斎藤のためになるのなら、たとえ脱水症状になろうとも、俺は遠慮なく涙を流し続けるだろう………………。
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