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俺に精算させないで
「あー、また画像がいっぱいになっちゃったよー。フォルダ増やさないと」
カチ……カチ……とパソコンの音以外は静かな、暗くて狭い部屋に音が響く。
俺は忙しなくカーソルを踊らせながら、苦笑した。
いや、いつもはこんな風に思わないんだけどね?今、ちょーっと過去の思い出に浸ってて。テンションが上がっちゃったって言うの?ウザ絡みして、黒池ちゃんたちに嫌われないようにしないとね。
「おっほ!こりゃ懐かしい!」
俺はとある画像を見つけ、声を上げた。
すると……。
「先輩、なに大きな声出してるんですか?」
黒くて長い髪の……俺の大事な後輩、黒池ちゃんが扉を開けて話しかけてきた。こう書けば女のように思えるが、彼は正真正銘、男だ。
「おや、黒池ちゃん。声、おっきかったかな?」
「おっきくてビックリしましたよ!師匠なんて、お茶が気管に入って大変なことになってるんですから!」
ぷりぷりと頬を膨らませた黒池ちゃんがパソコンに近付く。何やってるのかを見たいのだろうが、別にやましい事なんてしてないし、むしろ感傷に浸ってるというか。
「そ、それは災難だったね……」
「それで、何やってるんですか?」
「あぁ、画像の整理だよ。スマホで撮った写真をパソコンに入れてるんだ。ほら、推攻課っていつスマホが壊れるかわからない仕事してるでしょ?だから、大事なものは安全なところに保管しておかなきゃ!ね?」
ニコッと黒池ちゃんに向かって笑いかける。その点で一番不安な黒池ちゃんは、愛想笑いをしながら目を背けた。
「僕は先輩ほどネットとかスマホに興味無いですし、必要無いですよ……」
確かに黒池ちゃんのアカウントはほとんど俺が作ったものだし、動いている気配も無い。動いたとしても、受動的なものばかりだ。
「黒池ちゃんはそうかもしれないけどね、いつも危なっかしい黒池ちゃん専用の手綱として使ってるわけだから、ちゃんと開いて動かしてほしいな!」
「はいはい、わかりましたよ!……って、今、手綱とか言いました!?」
「あはは、どっちだろーねー?」
そう言って、パソコンの画面を見る。
見せられない画像が無いとは言い切れない。……いや、変な画像があるってわけじゃないよ。でもね、踏み込んでほしくない領域があるというかなんというか。
でも、一人一人、そういうのあるでしょ?
「もう……。僕は仕事に戻りますからね。また、何かあったら呼んでください」
黒池ちゃんは部屋を出ていった。
……さて、続きをしよう。
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