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はじめてのキス
「おいっ! 中村!」
「長谷川……」
私は俊に進学のことは伝えないまま、卒業した後はもう二度会わないつもりでいた。
だがそんな私を引き止めるかのように、学校の門から出ようとしていたところを俊に呼び止められる。
「お前、県外の大学に行くって……本当なのかよ」
「……誰に聞いたの? そうなの。来週には引っ越す予定」
「お前、なんで今まで黙ってたんだよ!?」
「特に深い意味はないよ。最後は笑ってさよならしたかったから」
「そんな大事なこと、勝手に決めるなよ!」
その時の俊の顔は、いつになく険しく怒っているかのようだった。
「ごめん。気まずい感じになりたくなくて、言えなかった。……ほんとごめんね」
「……別に怒りたいわけじゃない」
「長谷川は大学でもサッカー続けるんだもんね? 色々大変だろうけど頑張って。私も向こうで頑張る」
「なあ、一回黙って」
「……え?」
すると俊は私の腕をグイッと引っ張ると後頭部に手をやり、キスしてきたのだ。
グッと押しつけるような強引なキスは、慌てた顔の俊によってすぐに終わりを迎えた。
「っ……ごめん」
「え、何……何なの急に……」
「このままさよならだと思ったら、つい体が勝手に……本当にごめん」
「いや、そんなに謝らなくても……びっくりはしたけど」
「俺、お前が好きだよ中村」
キスが気まずくて俯いていた私は、突然の俊の告白にハッと顔を上げる。
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