やり直し ※

1/1
前へ
/38ページ
次へ

やり直し ※

 二人きりで過ごす久しぶりの誕生日。  用意したロールキャベツとチョコレートケーキはしっかりと俊のお腹の中へと収められた。  お洒落なペアのグラスにシャンパンを入れて乾杯し、食後はルームキャンドルを照らした室内で映画を観た。  二人並んでソファに座り、一つのブランケットに包まれる。  食後の満腹感と暖かさも相まって私は少し眠くなり、俊の肩にもたれかかった。  俊はそんな私をチラと見て、安心したように微笑みながら頭を撫でる。  こんな日が、再び訪れるなんて。  若い頃のような刺激に溢れた恋もいい思い出だった。  だけど今のこの落ち着いた関係も悪くはないだろう。 「な、なあ葵……」 「ん?」 「悪いんだけど、少し離れてくれ……」 「なんで? 重たい?」 「いや、そういうわけじゃ……」  俊は珍しくゴニョゴニョと歯切れの悪い様子。 「何? 言ってくれないとわかんない」 「……そんなにくっつかれると、俺の理性が限界になる」 「え……」  思いもよらぬ彼の返答に、私は一瞬言葉を失った。   「いや、今のは忘れろ。忘れてくれっ……」 「俊はしたいの?」 「……そりゃ、したいよ。好きな女が隣にいてそう思わない方がおかしいだろ。でも葵とは色々あったし、葵の気持ちに踏ん切りがついた時でいいから……って葵!?」  気付けば私は俊の頬に両手をやるようにして、自らキスをしていた。 「……葵、それどういう意味かわかってんの?」 「わかってる。私も俊としたい」 「まじかよ……もうやめられないからな……」  そのまま私たちは何度もキスを繰り返した。 「んっ……俊……」 「葵……好き、好きだ……」  最初は恐る恐る重ね合わせるだけのキスから始まり、やがては互いの舌を絡め取るような深いものへ。 「葵、ベッド行く?」  薄らと顔を赤らめた俊に尋ねられた私は、同じように顔を赤くして頷く。  すると俊は私をブランケットごと横抱きにして、寝室へと足を進めた。 「いや、恥ずかしい。自分で歩けるのに」 「いいから、黙ってろって」  俊は寝室へ入ると私をベッドにゆっくりと降ろした。  そして私の髪を愛おしそうに触ると耳にかけ、そのままベッドに押し倒すようにしてそっと自らの体重をかける。  ギシ……と音を立てたベッドがこれから始まる行為を連想させて、私は恥ずかしくなった。 「葵、いい?」  熱を帯びた俊の瞳に、彼も一人の男なのだということを実感させられる。 「うん」  了承を得たことを確認すると、俊は私の首元に顔を埋めた。  そしてちゅ、ちゅ、と首筋を吸い上げるようにして愛撫する。  久しぶりのその感覚に私は早くもおかしくなりそうだ。 「あっ……んっ……」 「葵、もっと声聞かせて」  俊も既に息が荒くなっており、この行為に興奮してくれていることがわかる。  そのまま彼の唇は鎖骨を通りながら下へと向かっていき、胸に到達した。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

660人が本棚に入れています
本棚に追加