そして恋人へ

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そして恋人へ

「ずっと言いたかったけど、こういうの慣れてなくて……嫌われるのが怖くて言えなかった」 「え、私……? でも私以外にも仲のいい子たくさんいたよね……?」 「あんなに毎日連絡とって休みの日も二人で会ったりしてたのはお前だけだよ」 「でも、私地味だよ……? 長谷川と釣り合わないかも」 「ばーか。そんなの考えたこともねーよ」  それから俊はポンポンと私の頭を撫でたあと、家まで送ってくれた。 「俺ら、付き合ってるってことでいい?」 「……長谷川が良ければ」 「なんだよそれ。俺はお前が好きだし、お前も俺のこと好きなんだろ? 両思いじゃん」 「そうか、私たち両思いなのか」  なんだか面白くなってしまって、私はクスリと笑う。  そんな私を見て俊はむっと唇を突き出した。 「そこ笑うとこじゃねーだろ」 「ごめん、なんだか信じられなくて」 「じゃあ、これからよろしくな……葵」  唐突に呼ばれた下の名前に、息が止まりそうなほど胸がぎゅっと苦しくなる。 「こ、こちらこそ……」 「俊って呼んで」 「い、いきなりはちょっと恥ずかしくて……」 「いいから、呼んで」 「……俊」 ◇  こうして私たちは晴れて恋人同士になった。  互いの家の行き来には新幹線を使って3時間の遠距離ではあったが、長期休暇の度に交代でそれぞれの家を訪れた。  会えない距離を埋めるように、電話やメッセージなどの連絡もこまめに取り合った。  そんなことをしながらなんとか大学生活四年間の遠距離生活を乗り越えたのである。  俊は不器用だけど優しくて、言葉が少し足りないところがあってもその態度で彼の気持ちを教えてくれた。  慣れない環境の中辛いことがあっても、彼の支えで乗り越えることができたと言っても過言ではない。
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