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そんな春野の返答に四月朔日は少し考え込み、ゲームのきりがいいところで、少し声を潜めながら春野に声をかける。
「ねぇ、桜空」
「あ?名前なんか呼んでどうしたんだよ」
「うーん、なんとなく?」
「なんだそりゃ?はいはい、なんですか、蕾毅さんや」
「そっちこそなに、その口調?」
普段名字で呼び合う2人ではあるが、珍しく名前で呼んだ四月朔日に春野は聞き返すも、四月朔日はふわふわとした返答を返す。
これは答える気がないなと察した春野は流すように四月朔日に続きを促した。
そんな春野の返しに四月朔日は笑いながら突っ込むも、切り替えるように真剣な表情を浮かべて慎重に言葉を紡いだ。
「ま、いいや。…ねぇ、愛しているよ、桜空」
一瞬の沈黙が降り立つ。
けれどすぐにゲームの音が響き渡り、その沈黙を打ち消す。
それまで言葉の掛け合いを軽く流していた春野は動きを止めるも、一拍の後に、相も変わらず真剣な顔を浮かべている四月朔日の顔に正面から向き直った。
そしてそのまま暫く見つめ合うも、ニヤッと表情を崩した四月朔日に春野は何かに気づいたかのように叫び声をあげた。
「エイプリルフールか!」
「あ、バレた?」
「おま、お前!ビビったじゃねぇか!」
「えー、だって春野ってば無言で見てくるから、こう思わず顔がさ、崩れちゃうじゃん」
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