6人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
まだ肌寒さを感じる三月初旬、私は友人の白雪に誘われ三泊四日の伊豆観光に来ていた。
なんでも旅館の予約をした白雪が当然私も着いてくるものだと、友人と私を含めた四人分の予約を入れてしまったらしい。
「キャンセル料を払うくらいなら旅費を折半する」という白雪の甘言に釣られた私は、そのやりとりをした三日後の十五時ちょい前。桜たいやきを片手に伊豆急下田のホームにいた。
「へー、これがキンメ電車か……なんかキンメ推しが凄いな。ロゴのOもキンメの目になってるし」
赤を基調とした車両に施されたシルバーグレーのグラデーションが、伊豆の特産である金目鯛を彷彿とさせる。
「ほんと、内装が豪華っていうかいつも乗ってる電車と全然違うんだけど。これに普通料金で乗れるなんて信じれないわ」
「それな。これを見ると水族館行きたくなる。下田に水族館あるみたいだし今から行っちゃ駄目……だよな」
「まぁ、元々明日行く予定だったしあと半日の辛抱だよ。それより夕飯が楽しみだな……今日泊まる旅館食べログでも結構評判良かったし」
そう言い白雪を諭してるのか食い意地が張ってるのか、よく分からない紬を無視し、私は内装を見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!