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何か言いたげな視線を知らんぷりしてメニューを開く。
全席にタッチパネルが備え付けられてて、注文からお会計まで簡単にできるように整えられてるんだよね。
私立ってすごい。
「俺はカツ丼にするけど、しのぶんは決まった?」
「…オムライスじゃないんですね」
「今日の俺は丼が食べたい気分なんだよ」
や、ほんとはオムライスのページを開いたときしのぶんがため息ついたからなんだけど…
ここの学食はどれも美味しいからいいんだけどね。
「唐揚げ定食でお願いします」
「りょーかい」
料理を入力して生徒手帳を読み取れば注文完了。
学園内での買い物は生徒手帳に記録され、月末にまとめて請求される仕組みになってる。
やっぱり私立ってすごい。
「俺の分まで払ってもらってすみません。後で払いますね」
「いいからいいから。お疲れさまってことで先輩に奢らせてよ。もう一踏ん張り、頑張ろう!」
これから先のことを思ってか、しのぶんの目からハイライトが消えちゃった。
クール系イケメンと見せかけて意外と表情豊かなのがウリのしのぶんが虚無ってる
「もう風紀は限界ですよ。それなのに違反行動は増えるばかりだし、親衛隊の空気感も非常に荒れています。このままじゃ、いつ制裁が起こってもおかしくありません」
「うーん。さっき見たテンちゃんの感じだと、人懐っこくて根が明るい。注意してくれる友達もいるみたいだし、学園のルールに馴染めればひとまず収まると思うよ」
「その『学園のルール』に馴染めなさそうだから困ってるんです」
「あっはは。確かに」
テンちゃんは、間違いなく良い子。
真っ直ぐで純粋な性根は普通の高校だったら多くの人に好かれたと思う。
でも、星蕾学園には独自の秩序がある。
馬鹿げたルールにだって意味がある。
「あの子はきっと苦労する。いずれ変わらないといけなくなる」
「仕方がないことですよ。この学園はそういう場所なんですから」
「うん。そうだね」
その道を通ってきた先輩として、陰ながらサポートしてあげよう」
俺自身の平穏のためにもね。
「お待たせいたしました。カツ丼と唐揚げ定食です」
「ありがとうございます」
「やった!もうお腹ぺこぺこ」
「…カツ丼、おいしそうですね」
「唐揚げ1個と交換しようか」
「「いただきます」」
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