44人が本棚に入れています
本棚に追加
連絡後、警察がやって来るとすぐ、現場検証が始まった。
写真を撮られた遺体は速やかに下ろされた。遺書もあり自殺の可能性が高いが、他殺の件も疑わなければいけないので、司法解剖に回されることになる。
「加藤さんちょっといいですか?」
刑事の度会が歩巳に声を掛けた。初老のいかにも刑事という風貌……ではなくどこにでもいそうな出で立ちだ。いや、あくまでも身なりの整ったどこにでもいる人という雰囲気。
「遺書には会社のお金に手を出したと書いてありました。つまり会社のお金というのは加藤さんの経営する会社、オーネストナイトのお金ということになりますよね?」
「この遺書が正しいならそういうことになります」
肩を竦めてて歩巳は答えた。
「ちなみに加藤さんはこの遺書は見たんですよね?」
「はい、見ました。だからびっくりしています。なぜそんなことになったのか? お金に困っているならそう言ってくれれば……」
「それがこれですね? 吉井さんのバックに入ってましたが」
現金が五百万ほど入っていた。
「そうなんですか? そんな大金……もしかして金庫のお金──!?」
歩巳は肩を落としてみせた。
「そうですか。こちらに関しては追々調べてみますが。ただ色々おかしな所もあるんですがね」
「おかしいところ? と申しますと?」
「いやいや。やはり自殺だけでもなく他殺の面も含めて捜査しないといけないものですから」
「他殺!? ですか」
「はい……ただこればかりはまだ分かりませんけどね」
歩巳は背中に汗がゆっくりと蟲が這うような流れを感じた。
──大丈夫だ、殺したのは俺じゃない──
最初のコメントを投稿しよう!