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「もう、すべきは分かってるわよね?」
志津香は先程、穂南に買わせたレターセットをデスクに広げさせた。
「好きなように書いていいわよ」
「好きなように?」
「そう……あなたの愛を認めて……思いをしっかり書いて私はちゃんと見定める……嘘はつかないわ……」
穂南は震えながら便箋に歩巳への思いのたけを綴った。ただ幸せになって欲しい旨の内容を震える手を押さえなんとか書き上げた。
「これでいい?」
「そうね……あなたの想いは分かったわ……まさかこんな形でお別れになるなんてね……穂南」
「ねぇ……考え直して……くれないかな?」
穂南は最後に懇願した。
「命乞いかしら……? 私も辛いわ……あなたが今から死んでいくのわ……だから私が手伝ってあげようかしら?」
志津香は薄ら笑いを浮かべた。そして耳元で囁く。
「早く死ねよ……」
穂南はもうこの道以外選択することが出来ない気持ちに陥った。志津香の狂気は私にはどうすることも出来ない。志津香は鼻唄を歌いながらクローゼットを漁っている。そこから歩巳のネクタイを取りだし、輪を作り丈夫な梁に引っ掻けた。穂南は震えながらそれを見上げた。志津香は椅子を持ってきた。
「穂南、ほら早くその椅子に登りなさいよ」
穂南は言われた通りそれに登る。
「何してるの? それを首に掛けるのよ」
穂南はネクタイの輪に首を掛けた。
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