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「そんな……」
歩巳は言葉を失った。
「でもね……穂南の書いた遺書じゃ足りなかったのよね。あなたを確かめるには……だから私が新たに書き直したのよ……ほら……読んでみなさいよ……それ」
志津香は穂南が書いたという遺書を読んだ。そこには事故を起こし逃げたのは私だと書いてあった。
「馬鹿よね……それじゃあ、あなたの気持ちが確かめられないじゃない……」
志津香は笑った。
「だからしっかり事故を起こしたのは歩巳さんで私はそれを隠した歩巳さんに堪えられなかったと書き直してあげた」
「なんてことを……」
歩巳はわなわな震えて本物の遺書を握り潰した。
「だって、こうでも書かないとあなたの本当の気持ちが分からないでしょう? だけどあなたは私が書き直した遺書を処分した……」
話を続ける志津香。
「そしてくだらない理由をでっち上げた。穂南がお金に困ってだなんて……ほとほと飽きれちゃったわ……」
「それは……じゃあなんで君はお金に困っただなんて……? どこで……」
「簡単よ。刑事さんがいろいろ質問してくるから……まるで穂南がお金に困ってなかったか? みたいな聞き方をするから……だからそれに話を合わせただけ……」
笑いを止めない志津香だった。
「でもね……私はチャンスを与えたつもりだったのよ……貴方に……」
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