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「──えっ? 何を?」
「ねぇ、なぜ貴方は轢き逃げをしたのに捕まらなかったと思う?」
「それは……」
考えを巡らせた。
「簡単よ……物的証拠がないからよ」
「──?」
「分からないの? 警察が轢き逃げ犯、それも死亡した場合の犯人を捕まえる割合ってどのくらいか分かる? かなり高いのよ。ほぼ百パーセント……そのくらい知ってるわよね?」
「それは……確かに」
「でも捕まらないのは……貴方が本当は跳ねてないからよ……」
「跳ねてない?」
「あれから何度もあなたの車を確認した。しかしあなたの車には人を跳ねたような後もなかったし、目立つような傷もなかった。目立つ傷がないんだもん、あなたは修理に出す必要も隠す必要もない。しかもあの暴風雨。証拠のものなんて多分残らないわ。それにあなたはあの大雨の中、轢いたかどうか確証は持てなかったはずだから。穂南もそん風に言っていたしね」
志津香は話を続ける。
「警察は今でもこの事件に関して何も進展してないんじゃないかしら。この件に関して何もあなたに言って来ないってことはあなたに全く辿りついてない……証拠なんてほぼゼロよ。事件の真相ほぼ迷宮入り……多分そういうことよ……」
「しかし、なぜそれが俺とってチャンスを与えたことになるんだ?」
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