第3章

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 そうじゃないと、幼馴染という重要な人物から、ヘレナを隠す理由にはならないような気がした。  そう思うからこそ、ヘレナはそっと視線を下に向ける。ルーカスは、少し慌てたような様子になる。 「……その、悪い意味では、ないんだ」  ……信じられなかった。 「幼馴染は……その。俺に好意を抱いてくれているんだ。だから、あの場で鉢合わせると修羅場は間違いないな……と、思って、だな」  ルーカスに好意を抱いているということは、女性の可能性が高そうだ。  そんなことを思ったら、不意に胸の奥につんとした痛みが走ったような気がした。  これではまるで……ルーカスのことが、好きみたいじゃないか。 (ほんの少し関わっただけで、好きになってしまうなんて……)  なんと、軽い女だろうか。  いや、今までもルーファスに片想いをしてきたようなものなので、少し違うかもしれない。  でも、ヘレナはそう思ってしまうのだ。 「俺は決して、ヘレナ嬢のことを紹介できない婚約者だと、思っているわけではないんだ」  ゆるゆると首を横に振りながら、ルーカスがそう続ける。  ……そう言ってもらえて、ほんの少しだけ救われたような気分だった。  ヘレナがそれを実感していると、目の前に先ほど注文したメニューが届く。  ミルクティーとイチゴのショートケーキを受け取り、ヘレナは気持ちを誤魔化すように軽く息を吐いた。  ミルクティーに砂糖を入れて、軽く混ぜて口に運ぶ。仄かな甘みと適度な温かさが、ヘレナの心を落ち着けていく。 (……そうよ。ルーカスさまにどう思われようが、私には関係のないことだわ)  ルーカスとヘレナは、そもそも似合っていないのだ。  ならば、彼にどう思われようが、知ったことではない。理解をする意味もない。  そう思うのに……この胸の痛みは、一体なんなのだろうか。  ふと視線を上げれば、ルーカスは何故か自分の飲み物やケーキには手を付けず、ヘレナのことを凝視していた。  その真っ赤な目があまりにも美しくて。ヘレナはぼうっと頬に熱を溜めてしまった。
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