第1章

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 真っ赤な美しい髪が特徴的な彼は、常に仮面をつけている。  それ故に、『仮面の舞台俳優』などという呼び名がついているくらいなのだ。  さらに言えば、この劇場で観られる劇は大体ルーファス。それから、もう一人の看板舞台俳優をメインにシナリオが描かれているため、仮面をつけている彼が浮くことはない。そういう点でも、とても素晴らしいと言える。  シナリオも演出も。俳優や女優の演技も、文句一つない。  ヘレナの両親の趣味も劇場が良いだったので、ヘレナは幼いころから劇を観てきた。その結果、舞台に対する目はかなり肥えていると自負できる。  が、そんなヘレナからしても『アシュベリー』で繰り広げられる劇の数々は、素晴らしいものだ。  もう、今までの劇がなんだったのかと思えるほどに、レベルが高すぎる。 (ここに通うのでお小遣いは殆ど飛んじゃうけれど……まぁ、仕方がないわよね)  ヘレナの実家であるメイプル男爵家では、子供に金銭感覚を身に着けさせるためといい、両親がお小遣い制度を導入している。  そのため、いろいろと大変ではあるのだが、こうやって劇場通いが出来ているという点では、ありがたさしかない。
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