第3章

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 ルーカスに手を引かれて、ヘレナはゆっくりと歩いていく。  彼はどうやらこの街には詳しいらしく、ヘレナにいろいろな説明をしてくれた。  あそこのカフェはチーズケーキが絶品だとか、そこのレストランは物珍しいメニューを出しているとか。  様々なことを説明してくれるルーカスの知識には、素直に感心するばかりだ。  ヘレナも普通の令嬢よりは街に詳しいとはいえ、彼の知識には遠く及ばない。 「ヘレナ嬢。何処か、行きたい場所はあるか?」  優しくそう問いかけられて、ヘレナは「えぇっと」と口ごもってしまった。  正直なところ、興味をそそられる場所はたくさんある。だが、たくさんありすぎて、何処を選べばいいかがわからない。  そう思ってそっと目を伏せていれば、ルーカスはヘレナに迷いがあると気がついてくれたのだろう。 「この先に、美味しいケーキを出すカフェがあるんだ。そこに行って、相談しようか」  彼は、そう提案してくれた。  それがとてもありがたくて。ヘレナは、こくんと首を縦に振る。  二人でなんてことない会話をしながら歩いていると、なんだか普通の恋人同士みたいだ。……まぁ、釣り合ってはいない、のだろうが。  心の中だけでそう思いつつ、ヘレナはルーカスの横顔を見つめてみる。  やっぱり、大層好みだ。そんなちっぽけな感想しか思い浮かばないほどに、彼の顔は美しい。 「ねぇねぇ、あの人、すっごくかっこいいね……!」  女性のそんな声が、ヘレナの耳に届いた。  その声のほうに視線だけを向ければ、そこには二人組の女性がルーカスのことを見て、こそこそと話をしている。  それに全面的に同意したい気持ちはあるものの、ヘレナは次に自分に突き刺さる視線を感じて、俯いた。
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