第3章

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 それがルーカスの望んでいる答えではないということは、わかっている。だから、なにも言えない。  そう思いヘレナが頬に熱を溜めていれば、ルーカスはヘレナの身体を引っ張った。 「……ちょっと、こっちにおいで」 「あ、あのっ!」 「大丈夫。……怖いことは、しないから」  ルーカスはそれだけを伝えると、ヘレナを路地裏のような場所へと連れて来た。  それに驚いてヘレナが目を瞬かせれば、彼はヘレナの身体を後ろから抱き込んでくる。 「ちょっと、ごめんね」  彼が、耳元でそう囁いた。 「え、えぇっと……」 「ちょっと、知り合いがいてさ」  ルーカスはそのきれいな手をヘレナの口に当てながら、そう言う。どうやら、あまり見つかりたくない相手のようだ。  彼は路地裏から表通りを観察しつつ、ヘレナの身体を抱きしめてくる。……伝わってくる体温が、熱い。 (こ、こんなの、無理、むりぃ……!)  心の中ではそう叫べるのに、ヘレナの身体は硬直して動いてくれない。  ぎゅっと手のひらを握って、羞恥心を逃がそうとするものの、それさえも上手く行かない。 「……行ったかな」  すぐそばから、ルーカスの声が聞こえてくる。  至近距離に彼がいることもあり、耳元に彼の吐息が当たってこそばゆくてたまらない。  それに……なんとなく、身体が、熱くなってくような感覚だった。 (こ、こんなに、密着して……!)  この路地裏は、割と狭い。その所為で、二人で隠れるのは少々辛かった。  だが、ルーカスはそんなこと気にもしていないようで。  ヘレナだけが意識しているかのようで、なんだかもやもやとしたものが胸の中に募ってしまう。 「……行った、みたいだな」  そして、ルーカスがそんな言葉を呟いて、ヘレナを解放してくれた。 「る、ルーカス、さま……」  顔全体を上に向けて、ルーカスの顔を見上げる。  ……すると、彼は何故か顔を赤くしていた。
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