第3章

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 あえて言うのならば、観劇に行きたい。それくらいだろうか。 (でも、ルーカスさまだって舞台俳優なの。……ほかの舞台を観に行こうと言ってしまえば、嫌がられてしまうかもしれない)  けれど、ルーカスのことを思うと、その提案は憚られた。  そのためヘレナが黙り込んでいれば、ルーカスは「あっ」と声を上げて、持っていた鞄の中を漁る。  そして、彼が取り出したのは、二枚のチケットだった。……そこには、ここら辺にある大型劇場の名前が綴ってある。 「アレックスさんから、勉強がてら行ってきたらどうかと言われていたんだ。……よかったら、今から行かない?」 「……今から、ですか?」 「そう。これは関係者のチケットだから、座席とか時間とか。そういうものは書いていないんだ」  確かにルーカスの取り出したチケットは、普通のものとは少し違うようだ。 「アレックスさんが、この劇場の支配人と古い友人でね。チケットを手に入れてくれたんだ」  ヘレナが口に出さなくても、ルーカスは理由をなんのためらいもなく話してくれる。  ……そういうこと、ならば。  心の中でそう思い、ヘレナはこくんと首を縦に振った。 「私で、よろしければ……」  それから、小さくそう付け足す。 「ヘレナ嬢。私でよろしければ、じゃないんだよ。俺は、キミと行きたいんだ。そう、思っている」  だけど、ルーカスはヘレナの言葉を優しく切り捨てた。  その言葉にヘレナがいたたまれなくなって、視線を逸らす。すると、ルーカスは「決まりだね」と言って紅茶を口に運ぶ。 「次の演目が始まるのは、今から四十分後。ここから徒歩で五分程度で着くから、もうちょっとゆっくりとしようか」 「あ……はい」  ルーカスがふんわりと笑って、そう言ってくる。
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