第3章

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 彼のその表情も、その態度も。その仕草さえも、ヘレナを魅了してやまない。  ……この気持ちは、ルーカス・レイクスに向けたものなのか。はたまた、舞台俳優ルーファスに向けたものなのか。  それがはっきりとはしないものの、ヘレナは確実に――彼に、惹かれていた。  その認識を強めつつ、ヘレナはルーカスに振られた話題に的確に答えていく。  どんな食べ物が好き? 趣味は? どんな色が好き?  他愛もない話題だったものの、ルーカスといるとなんとなく輝かしく思えてしまう。  ……きっと、それもこれも彼の話術が巧みなためだろう。  貴族の男性のステータスでは話術も重要視されている。女性をいかにして楽しませるか。それで、男性の器量が決まると言っても過言ではないのだ。 (……そう思ったら、ルーカスさまって本当に完璧だわ)  巧みな話術。美しい容姿。家柄も文句なく、自分でも稼いでいる。  だから、彼に憧れている女性は本当に多いだろうに。 (私、は……)  対するヘレナは、どうだろうか?  そう思ったものの、ヘレナの心の中には今までにない気持ちが、少しずつ芽生え膨らんでいた。  ――ルーカスに、少しでも相応しくなりたい。  俯いてばかりの、地味な女じゃなくて。少しでもルーカスの隣に立って、認められるような女性になりたい。  そんな気持ちが確かに胸の中で膨らんでいて、主張をしていく。……出来るかどうかは、わからないが。 (でも、もう逃げるのは嫌……なの、かも)  ずっと、過去の言葉に囚われてきた。  他者の評価を過剰なまでに気にしてしまうようになった。  けれど……今後は、そういうことは必要以上に気にしない方向で行きたい。  ヘレナはそんなことを思いながら、ルーカスの言葉に自然と笑みを浮かべていた。
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