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白川結衣の失敗
38度8分。病院でインフルエンザと診断された。
節々や頭の痛みと身体のダルさに苛まれながら、新婚2ヶ月目のわたしはマンションの3階にある新居に病院から何とか帰宅した。
ブブッとスマホが小刻みに揺れたのに気付き、ショルダーバッグから取り出して見ると、職場のグループLANEに営業4課の課長からメッセージが入っていた。内容は、熱が下がってからも2日間は会社の規定で休めということと、出勤出来る目処が付いたら連絡するようにということだった。
重苦しい身体で重苦しい指を動かしながら、長期欠勤に対する陳謝と熱が下がったら連絡する旨の返信を打ち、続けて冬彦のトーク画面を開いた。
30分前に送った『インフルだった』のメッセージに既読はついているけど返信がない。
時間は12時半を過ぎている。営業1課の課長をしている彼はきっと仕事が忙しくて休憩もままならないのだろうと思い――4課の課長は返事をくれたのに1課の課長は返事が打てないほど忙しいのだろうかという疑問が一瞬頭を過ぎったけど、そんな人ではないと自分に言い聞かせ――スマホを伏せた。
ああ、ダルい。ツラい。死にそう。冬彦さんが帰って来るまでの我慢だ。
冬彦が帰って来れば看病をしてくれると信じて、ふらふらとケトルでお湯を沸かして、コンビニで買ってきたフリーズドライの梅がゆに注いだ。
食欲は無かったけどなんとか完食して薬を飲み、重い身体をのろのろと動かして部屋着に着替えて洗濯機を回した。
少量の洗濯物だけで回すのは洗剤も水道代も電気代ももったいないけど、インフルウィルスが付いてるかも知れないから、冬彦さんに伝染さないようにね。というより、わたし自身からインフルウィルスは出ているから意味ないかもだけど。
洗濯物を干す体力も気力ももはや無いので、電気代がもったいないけど乾燥までを予約セットした。インフルが治ったらアイロンかけないと。というより、冬彦さんがきっとやってくれるはず。だって彼は本当は優しい人だから。
おぼつかない足で何とか寝室のベッドに辿り着いた私は、冬彦が帰ってきたときにインフルエンザをうつさないようにと、苦しいけどマスクを外さずそのまま横になった。
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