白川結衣と憧れ

3/3
前へ
/66ページ
次へ
 そう、あの時のわたしは30歳までに結婚しなければと焦っていたのもあって、30歳目前で結婚してくれると言ってくれた冬彦との未来が全てだった。  30代で結婚する人が多いことは分かっていた。けれども30代になるという得体の知れない恐怖から来る重圧と、子どもを産むのにある程度の時間的余裕が欲しかったこともあって、どうしても30歳までには結婚したかったのだ。  聞く耳を持たないわたしに翼ちゃんは引き続き真顔で言った。 「何歳(いくつ)で結婚するかじゃなくて誰と結婚するかだよ」 「冬彦さんは運命の人だから間違いないよ!それに、そんなこと言って婚期を逃して子どもが持てなかったらどうするの!?」 「子どもを持つにしても、本当に大事にしあえる人との結婚が大前提だよ」 「冬彦さんとわたしは大事にし合っているよ!!誰もがうらやむ一群の男子が次から次へと寄ってくる翼ちゃんから見れば冬彦さんが大したことのない人に見えるかもだけど、わたしには冬彦さんしか居ないの!!頑張らなくてもモテる翼ちゃんには分からないんだよ!!翼ちゃんとわたしは違うんだから!!」  そう言い放った瞬間、翼ちゃんが哀しそうな表情になったのが分かり、わたしはハッとした。  その後、翼ちゃんとはしばらく気まずくなって、連絡も途絶えた。けれども結婚式にはどうしても来て欲しくて、1番の友達だからスピーチもして欲しくて、勇気を出して結婚はするけど仲直りもしたいとLANEで伝えた。  そうして仲直り出来たのだけど、今思えば翼ちゃんは冬彦の最低な部分に気付いていたからあんなに反対をしたのかも知れない。  けれどもあのときは冬彦と結婚する以外の未来は考えられなかった。わたしにとって冬彦が全てだったから――
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

161人が本棚に入れています
本棚に追加