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白川結衣と翼ちゃん
翌日の昼過ぎ、カチャカチャと食器同士が軽くぶつかる音で目を覚ますと、翼ちゃんがグレーのパンツスーツ姿で、わたしと冬彦のベッドの間にあるサイドテーブルに、1人用の土鍋や急須が乗ったトレーを置いていた。
なんで翼ちゃんがここに……?
薬のおかげで昨日より少しはマシにはなったけど、まだ熱は下がらず身体の節々は痛い。ぼんやりとしたまま翼ちゃんを見つめていると、視線に気付いた翼ちゃんがわたしに振り向いた。
「ごめん、起こしちゃった?LANE入れたんだけど未読のままだったから心配で来ちゃったんだ。気分はどう?」
憂いを帯びた笑みを浮かべて静かに話しかけるその姿からは、心配してくれているのが分かる。わたしの目には涙が溢れていた。翼ちゃんが助けに来てくれたんだ。
「あ……ありがと……何でわたしがインフルって分かったの……?」
「昨日の夜中にLANEくれたでしょ?今朝気付いてビックリしたんだから」
LANE……?意識がもうろうとしていたから覚えていないけど、昨日の夜、自分のゲロをなんとか片付け終えた後、精神的に追い詰められていて心の中で翼ちゃんに助けを求めていたのは覚えている。
わたしは寝たままの格好で、枕の横に置いてある、わたしのスマホに手を伸ばした。
横向きに寝たままで画面をタップしてロックを解いてすぐにLANEのトーク画面が出て来て、今朝の2時11分に『たすけていんふるしんどい』とわたしから打ったメッセージが残っていた。朝6時02分に『大丈夫?』という翼ちゃんからのメッセージと、7時53分に着信、11時28分に『お昼作りにいくね』と再度メッセージが入っている。
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