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料理の勉強をしたお陰で、昔と比べたら遥かにうまくなった。これも全部、志信との思い出のお陰だろう。そう言えば、日記にも書いてあったけど料理を上手くなろうと思ったのは志信とのお花見デートが切っ掛けだった。
今頃志信も別の誰かと一緒にお花見でもしてるのかな。その子の手料理を食べて美味しいと言っているのだろうか。
私はサンドウィッチを口に運ぶと、桜を見上げながらもぐもぐと食べた。
「卵焼き、うまい」
「でしょ」
私は自信に満ち溢れた笑みを浮かべる。
「いやー、また来年も来たいね。お花見」
「そうだね。まだ付き合ってたらね」
「え、来年の今頃は別れてる感じ?」
「未来は誰にも分らないからね~」
「ちょっとー。俺は絶対に別れないよ」
「はいはい」
私がアハハっと笑うと、憲治が少し口をムスッとさせた。でもすぐに笑って、お酒を一口飲んだ。
「しのぶー」
体が思わず反応していた。声がする方を向くと、可愛らしいワンピースを着た女の子が手招きをしている。その女の子に一人の男が近づいていった。
「ここ良さげ」
「ここにしようか」
二人でレジャーシートを引き、仲睦まじそうに腰を下ろした。
志信だ。牧志信だ。
久しぶりに見た志信に私は思わず口が開いてしまう。隣で「どうかした?」と憲治に聞かれるが、声が出ない。
志信の視線が動いた。桜の花びらを目で追っているようだ。そして、止まった。
目が合った。
綾子だ、と向こうも思っているのだろう。
私がペコリと首を垂れると、向こうも会釈をした。それからお互い視線をずらして、各々のパートナーの方を向く。
「知り合い?」
「うん、高校の同級生」
「そっかー。まぁ、ここ綾子の地元近いもんね」
「うん。元気そうで良かったよ、向こうも」
私はもう一つサンドウィッチを口に運んだ。
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