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「イヤリングどこー!」
私はどこかに転がり落ちてしまったイヤリングを探しながら、棚の下やベッドの下などの隙間をスマートフォンのライトを頼りに探す。あと少ししたら家を出ないといけないのに、そのタイミングでイヤリングが落ちてしまったのだ。
「もうー」
私は若干苛立ちながらも目を凝らしていると、キランと輝く何かを見つけ手を伸ばす。
「あった!」
探していたイヤリングだった。彼氏の憲治が誕生日にプレゼントしてくれたものだ。今日は彼とお花見デートなので、絶対につけると決めていた。
私はイヤリングの奥にも何か落ちていたのを思い出して、再び隙間に手を入れる。それを引っ張り出すと、埃にまみれた一冊のノートが出てきた。百均で売っているようなページ数の少ない可愛らしいノートである。
「何これ」
私は首を傾げると、埃を掃ってノートの表紙を捲った。
2019年9月27日
牧から告白された。
私はすぐにノートを閉じた。そうだ、これは日記だ。高校生の時の私の日記。普段日記なんて書くような性格をしていないのに、初めてできた彼氏に浮かれて書き始めたものだった。
私は恐る恐るノートを捲る。私の字とは思えないくらい、丁寧で可愛らしい丸っこい字で書かれたノートに目をやった。
2019年9月27日
牧から告白された。記念して、今日から頑張って日記を書くことにした。こんなの牧に知られたら馬鹿にされるから、絶対に言わない。ただの女友達としか思われていないと思っていたから、普通に諦めようとしていたのに。神様って本当にいたんだなー。想い続けててよかった! 本当に幸せ!
いかに自分が浮かれているかが、文章から見え見えだった。思わず溜息が出てしまった。
私は懐かしさに浸りながら、ページを進めていった。
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