ウェルテルの花

1/13
前へ
/13ページ
次へ

ウェルテルの花

 人生の終わり。それは死に違いない。  死後の世界の存在を説く夢想家達は皆とうにこの世から去り、何も生まないことが知れた信仰はマッチの炎のように儚く消えた。  死は終わり。それ以降にはただ無があり、何も無い。  しかし、人間は死に向かって突き進む。戦争に経済恐慌に伝染病。ありとあらゆる悪いことが同時多発的に発生し、今の世界は負の凝縮体のようになってしまっている。  夢も希望もありません。それが世界の全て。  不安、絶望、閉塞感。鬱に経済格差に虚しさ。犯罪に汚職に弱い者いじめ。  自暴自棄がトレンドでありつつも、高い承認欲求はいまだに満ち足りない。  そんな混沌とした世界で。  彼女は愛を叫んでいた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加