若きはるちゃんの悩み

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 バイト中は、接客したり、さや姉さんと話したりして、時間がまたたくまに過ぎていく。  家に帰ると、誰もいない暗い部屋へ向かって「ただいま」って言う。  電気をつけて、ソファに座る。  コウタくんの影が少しづつ薄くなる。いつまで経ってもラインに既読はつかない。私のしていることがよくないことのような気持ちになる。  彼の迷惑になることしかしていないのかしら。待つだけなの。私の時間はどんどん過ぎていくのに。  そんな私のことを全てわかってくれた上で、優しく接してくれたアズマさん。あの時も何度も謝ったけれど、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。  楽しい時間だった。彼は自分の失敗談や先輩や後輩の面白い話をたくさんしてくれた。  私はアズマさんに会いたいのだろうか?それって自分勝手じゃない?  だめだ、何か作ろう。気が変になる。ベーコンがある。じゃがいも、キャベツ、人参か。ポトフだ。澄んだスープがいい。  包丁をもつ。適当にざく切りにして鍋に入れる。塩胡椒とコンソメを入れる。  私。私。私。作れ。食べろ。集中しろ。  ラリック美術館の記憶も寄席の落語の記憶も無くなってしまえ。  
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