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黙示 (後編)
そこでこのたび、私達文官種族の有志は、
多数の有能な産業種族・技術種族や、
良識ある穏健派軍事種族と共に新王朝を設立し、
平和回復と国家復興に努めることを決めました。
私達はまた、恒星間を渡れる発展途上種族や、
銀河系外周種族とも協力を図りつつあります。
幸いにも、内戦以前から私の種族のもとには、
〝先帝〟種族から多数の人格が亡命・避難しており、
彼女達にその指導を仰ぐこともできました。
私達の願いは〝先帝〟が常に目指していた、
〝全種族のための文明発展〟です。
未来ある若き種族が帝国に加入できる条件は、
惑星統一政府や恒星間航行技術を持つことですが、
内戦の勃発という非常事態により、
皆様との正式な接触は予定より早まりました。
戦いの行く末も、今はまだ予断を許しません。
しかしこれまで人類の皆様は、
神話の中の倫理や道徳を見事に会得し、
時に過ちを犯しても、それを正して自らを高め、
規則自体も社会の変化に応じて見直し続けることにより、
めざましい文明発展を遂げました。
それゆえ皆様は現下の困難な状況にあっても、
必ずやきっと私達〝新帝国〟種族の誠意と熱情を信じ、
私達を逆族として討滅しようと企む
中枢種族の政治宣伝に惑わされることなく、
自世界の平穏と繁栄を保ってくださることでしょう。
私達の新国家の理念とは、
政策が文明の発展に伴い、人々の向上を前提として、
国家の拡大・統合など広域化すると共に
民主化・自由化など分権化するというものです。
その理由はといえば、驚くほどに単純明白です。
技術の進歩に伴って、
経済・社会活動が拡大・省力・複雑化すれば、
より多くの人々が共に考えないと政策が運営できず、
それができる生活の余裕も生まれる一方、
それ以外の仕事はなくなっていくからです。
旧帝国においては銀河系の広大さが、
その発展を一時的に退行させていたにすぎず、
今後はさらなる生産・輸送・通信技術や
保健・教育・組織運営技術の発達によって、
政策の広域化と同時に分権化もまた可能、
かつ必要となりゆくことでしょう。
そのため私達は、〝先帝〟種族の
遺志実現のためにも将来の民主化を目指し、
必要な次世代技術の裏付けを得たうえで、
様々な種族の向上と協力を増進しつつ、
旧帝国の側近種族達と戦っています。
しかし、偉大な文明を築きつつある人類は、
いずれの陣営が勝利しようとも、
新たな銀河秩序の中核を担うまでに
発展できるものと、私は強く期待しています。
ですから人類の皆様、私は今、このように
真実を語れることをとても嬉しく思うのです。
「……以上の経緯からここに私、
旧帝国文明開発長官にして新帝国皇帝種族たるサタンは、
帝国の慣習法に従い、
母星の量子頭脳網と当分離個体と派遣頭脳の名において、
この太陽系第三惑星〝地球〟を含む、
銀河系内の実効的支配領域における統治を宣言する……」
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