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光がおさまる頃におそるおそる瞼を開く。チカチカする目を元に戻そうと瞬きを繰り返した。チカチカがキラキラに変わった。
キラキラの正体に壁に背を付くまで飛び退った。金の緩くウェーブのかかった腰まで伸びた髪の青年が瞼を下ろしあぐらを描いている。白を基調に金の刺繍が施された服は、俺が着ているワゴンセールの物とは根本から違う。青年のまつ毛が震える。ゆっくりと持ち上げた瞼から現れたのはアメジストのような瞳。シミひとつない透き通る肌に、血色の良い唇。絵本に出てくる王子様そのもののような風貌だ。
青年はキョトンとして辺りに目を走らせる。俺を捉えると立ち上がって、驚くほど長い足でこちらと距離を詰めた。もう下がれもしないのに、背中を壁に擦り付けるように下がろうとする。
絶対に悪魔じゃない。だってこんなに白くてキラキラしているんだから。天使って言われた方がしっくりくる。羽なんて付いてないけど。それに美形には耐性が無さすぎて、悪魔よりも恐怖の対象だ。やっぱり俺の血が原因か? 美女の血を用意出来ない人間には召喚なんてする資格ないって事か? あっ、あと靴脱げよ。ここは土禁だ、と言いたいのに唇が震えて言葉にならない。
「お前が私の花嫁か?」
頭ひとつ分高い位置にある端麗な顔が人懐っこく笑う。手を取られて甲に唇が触れる直前で慌てて手を引いた。
「なっ、何して……、それより花嫁って何ですか?!」
顔は真っ赤、頭の中はぐちゃぐちゃ。情報を処理しきれない。
「花嫁召喚の儀で召喚された花嫁じゃないのか?」
「召喚されたのは貴方です」
「そうだな。私は城の儀式の間にいたはずだが、どういうことだ?」
首を傾けているがこっちが聞きたい。城って事は見た目通り王子って事だろうか? それに花嫁って召喚するもんなのか?
「あの、1つ確認したいのですが、貴方は悪魔ですか?」
「私が悪魔に見えるか? オルフェンデェ王国第3王子ライディアーラ・ロエ・オルフェンデェである私が?」
なんか聞いた事もない国名出てきた……。漫画やゲームで見た事ある、異世界から召喚か?
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